


シャム猫はよく鳴く。おしゃべり。話しかけるように鳴く。
シャムを調べると、どのページにも必ず書いてあります。集合住宅で迎えようか悩んでいる方なら、ここでいちばん手が止まるところかなと思います。
で、そこまで言われているなら 1時間に何回くらい鳴くのか が知りたくなって、調べはじめました。
結果から言うと、その数字はありませんでした。代わりに、ちょっと面白いものが出てきます。
順番に見ていきます。
このセクションで分かること:猫種ランキングのもとになっているデータの正体

猫種ごとの性格を順位にした資料で、いちばんよく引かれているのが、カリフォルニア大学デービス校の2人の研究者がまとめた猫種プロフィールです(Hart & Hart『Your Ideal Cat』Purdue University Press、2013年)。
ここで シャムは15猫種中「鳴き声の多さ」1位 にランクされています(カリフォルニア大学デービス校のニュースリリース)。日本語で見かける「シャムは猫種のなかでもトップクラスに鳴く」は、たどっていくとだいたいここに行き着きます。
この調査のやり方を見てみると、こうです。
アメリカ猫臨床医協会に所属する 80人の開業獣医師 に、15の猫種を 12の行動特性で順位づけ してもらう。ただしひとりが見るのは全部ではなく、15猫種から無作為に選ばれた 5猫種と、比べるための短毛・長毛の雑種 だけ、という設計です。
つまり測っているのは、猫の行動ではなく、獣医さんの印象 なんです。
これ、価値がないという話ではありません。日常的にたくさんの猫を診ている人の印象は、それ自体がひとつの情報です。ただ「1時間に何回鳴いた」のような観察記録とは、別のものだということです。
ちなみに12特性のうち、猫種を見分ける力が高かったのは3つだけ と整理されています。7つは中くらい、2つは低い。全部の項目が同じ強さで信用できるわけではない、ということですね。
猫種の行動を比べた研究でいま最大規模なのが、フィンランドの研究チームのものです(Salonen ら、Scientific Reports、2019年)。
飼い主へのアンケートで 5,726匹・40猫種 を集め、小さい猫種は遺伝的な近さでまとめて19のグループにして比較しています。シャムもここに入っていて、バリニーズやオリエンタルショートヘアなどと一緒に「オリエンタル系」として扱われています。
この研究が比べた行動は10項目。活動量、人への接し方、知らない人への人見知り、新しいものへの警戒、家族・来客・ほかの猫への攻撃性、ウールサッキング、過剰グルーミング、飼い主が感じる問題行動。
鳴き声は入っていません。
いちばん大きな調査で測られていない。これが「回数の数字が出てこない」理由だったりします。
この研究の中身は ロシアンブルーの後悔|人見知り1位という研究と5つの注意点 でもう少しくわしく書いているので、よければあわせてどうぞ。
このセクションで分かること:シャムとペルシャを実際に見くらべた研究が、鳴き声について何を見つけたか

印象ではなく、家庭に入って行動を観察した研究がひとつだけあります。猫と人の関係を長く調べてきた研究者が、雑種・ペルシャ・シャム を比較したものです(Turner、2000年。本人による2021年の要約 が無料で読めます)。
ペルシャとシャムが選ばれた理由が、わりとはっきり書いてあります。性格のタイプとして、ほぼ正反対の両端だと考えられていたから。鳴かない代表と、鳴く代表ですね。
先に、いちばん大事な結果を書きます。著者本人が後年こうまとめています。
ペルシャはシャムより活動量が少なく、鳴くことも少なかった。シャムのほうが遊び好きで、飼い主に要求してくる。
つまり「シャムはよく鳴く」は、家庭での観察でも方向としては支持されています。ここは否定されていません。
見つからないのは、その先です。何回鳴いたのか、ペルシャの何倍だったのか。そういう数字は公表されていません。
同じ研究には、もうひとつ結果があります。飼い主による評価のうち差が出た項目を並べたのが下の表です。数字は平均順位で、大きいほどその傾向が強いという意味。雑種61匹、血統書つき56匹(ペルシャとシャムの合計)の比較です。
| 項目 | 雑種 | 血統書つき | p値 |
|---|---|---|---|
| 飼い主への愛着 | 49.8 | 69.0 | <0.001 |
| そばにいる | 49.5 | 69.3 | <0.001 |
| 知らない人への人なつこさ | 51.5 | 67.2 | <0.01 |
| 飼い主に向けて鳴く | 51.7 | 67.0 | <0.01 |
| 食べ物の好みがうるさい | 52.4 | 66.1 | <0.05 |
| 行動の読みやすさ | 53.0 | 65.5 | <0.05 |
| 尿スプレー | 63.4 | 54.3 | <0.05 |
| 独立心 | 64.3 | 53.2 | <0.05 |
p値の列は「この差が偶然で出る確率」です。数字が小さいほど、偶然ではなさそうという意味になります。
「飼い主に向けて鳴く」にも差が出ていますが、これは ペルシャも含めた血統書つき全体 の数字です。そして論文本文には、こう書かれています。
2つの純血種のあいだで差が出た項目の数は、それぞれと雑種とのあいだで差が出た項目の数より少なかった。
正反対の両端として選んだはずの2猫種が、たがいにはあまり違わず、どちらも雑種とは多くの項目で違った。著者はこれを、血統書つきの猫が 人と付き合いやすい方向にそろって選抜されてきた結果ではないか と解釈しています。
ここ、二段構えになっています。
なので、雑種から迎え替える方なら「シャムだから」だけでなく「血統書つきの猫だから」の部分も込みで、鳴かれる場面は増えると思っておくのが近いかなと思います。
そのうえで集合住宅での判断は、「シャムかどうか」より 要求鳴きにどう応じるか で考えるほうが現実的かなと思います。
要求して鳴く → 応じてもらえる、を繰り返すと、鳴く行動は強くなっていきます。ここは猫種に関係ありません。やることは、
猫の鳴き声そのものの対処は ベンガルの鳴き声がうるさい?独特な声の理由と4つの対処法 にまとめているので、集合住宅の方はこちらも見てみてください。
ただし、急に鳴き方が変わった・夜中に鳴き続けるようになった というときは、しつけの話ではありません。甲状腺や痛み、高齢なら認知機能の低下が隠れていることがあるので、動物病院で診てもらってください。
このセクションで分かること:鳴き声の代わりに大規模調査が見つけた、シャムの傾向

先ほどの5,726匹の調査にもどります。鳴き声の項目はありませんでしたが、オリエンタル系が1位だった項目はちゃんとありました。
自分の毛をなめすぎてしまう行動です。5,683匹を対象にした分析で、バーミーズとオリエンタル系が最も高い という結果でした。いちばん低かったのはブリティッシュショートヘアとペルシャです。
同じ調査で、飼い主が「問題行動がある」と答えた割合 でも、オリエンタル系はペルシャと並んで最も高いグループでした(5,550匹での分析)。
この論文、冒頭で「オリエンタル系の猫は、他の血統書つきの猫や雑種より、常同行動を起こしやすい遺伝的な傾向があるようだ」と先行研究を引いています。その指摘と、今回の過剰グルーミングの結果がそろった形です。
なめすぎは、お腹や内ももの毛が薄くなるところから始まることが多いです。見つけたら「クセかな」で済ませず、まずノミ・アレルギー・痛みがないか を動物病院で確認してもらってください。皮膚の病気が先にあって、そのせいでなめている場合がけっこうあります。
意外なのがこちらです。
ウールサッキング(毛布やセーターを吸ったり噛んだりする行動)は、シャムやバーミーズに多いと昔から言われてきました。実際、この行動を調べた研究はシャムを対象に組まれることが多いです。ところが同じ調査(4,925匹)で最も多かったのは、雑種、ノルウェージャンフォレストキャット、ターキッシュバン、メインクーン。オリエンタル系は最多グループに入っていません。
もちろん「シャムでは起きない」ではありません。シャムとバーマン 204匹 を対象にしたケースコントロール研究もあります(Borns-Weil ら、Journal of Veterinary Behavior、2015年)。この研究でわかったことが3つ。
いちばん大事なのは1つ目です。シャムが布を吸っていたら、性格のクセではなく、体のどこかの不調のサインかもしれない。布を飲み込むと開腹手術になることもあるので、どちらの意味でも受診する理由になります。
このセクションで分かること:ここまでの話を、お迎え前の判断材料にまとめたもの
シャムの鳴き声は、量を測った研究がありません。確かめられているのは、血統書つきの猫は 飼い主に向けて鳴く 傾向が雑種より強いということ。
つまり「うるさい猫」ではなく「こちらに言ってくる猫」です。対応を決めずに迎えると、要求鳴きがどんどん育ちます。
5,683匹の調査で、シャムを含むオリエンタル系 が最も高いグループでした。シャム単独の数字は公表されていませんが、お腹や内ももの毛が薄くなってきたら、クセで片づけずに受診を。
204匹の研究で、シャムでは併発している病気との関連が出ています。やめさせるより、まず診てもらうほうです。

イギリスの大規模な集計で、シャムの0歳時点の平均余命は 11.69年 でした(Teng ら、2024年。死亡88頭から算出、95%信頼区間10.56〜12.82年)。
同じ調査の他の猫種はこうです。
| 猫種 | 0歳時点の平均余命 | もとになった死亡数 |
|---|---|---|
| バーミーズ | 14.42年 | 45頭 |
| バーマン | 14.39年 | 38頭 |
| 雑種 | 11.89年 | 7,117頭 |
| シャム | 11.69年 | 88頭 |
| ペルシャ | 10.93年 | 80頭 |
| メインクーン | 9.71年 | 69頭 |
| スフィンクス | 6.68年 | 18頭 |
(12猫種が載っている表からの抜粋です)
日本では「シャムは12〜15年」とよく書かれています。この集計では、雑種の11.89年とほぼ同じ でした。信頼区間が重なっているので「雑種より短い」とは言えませんが、長生きな猫種として選ぶ理由にはならない 数字です。
ふたつ、読むときの注意があります。
ひとつめ。これは 0歳時点の平均余命 なので、子猫のうちに亡くなった子も含んだ平均です。日本でよく見る「12〜15年」は、無事に育った子が何歳まで生きるかの話であることが多く、そもそも別のものを比べています。
ふたつめ。これはイギリスの動物病院のカルテから出した数字です。論文自身が、純血種の0歳時点の平均余命はイギリスで10.41年、アメリカで11.85年と国によってかなり違うと書いています。そのまま日本に当てはまる数字ではありません。
猫全体の寿命の話は 猫の平均寿命|長生きする子の共通点と今日からできる5つの工夫 にまとめています。
シャムの顔・耳・足先・しっぽだけが濃いのは、色素を作る酵素(チロシナーゼ)の遺伝子に変異があるからです(Lyons ら、Animal Genetics、2005年)。12猫種と雑種、あわせて200匹以上を調べて、シャムのポイント柄が エクソン2のG302Rという1か所の変化 によることを特定しています。
この酵素、体温が低いところでしか働きません。だから末端だけ色が出るわけです。
実用面での意味はこうです。
最後のひとつは、仕組みから説明はつくものの、測った研究は見つけられませんでした。ただ避妊手術のあとに「お腹だけ黒くなった」と驚いたという話は見かけるので、知っておくと慌てずにすみます。
濃い部分の色には種類があって、こげ茶がシールポイント、青みがかった灰色がブルーポイント、ほかにチョコレートポイント、ライラックポイントなど。どれも同じ仕組みで、出てくる色素の種類が違うだけです。
ちなみに、バーミーズは同じ遺伝子の別の場所の変異で、温度感受性が弱いぶん胴体にも色が出ます。この2つは兄弟みたいな関係なんですね。
そしてもうひとつ。この色素の変異は、目から脳へ向かう神経の配線にも影響しています。シャムは視覚の経路が他の猫と少し違うことが古くから知られていて、脳科学の教科書に出てくるくらい有名な例です(Walsh、European Journal of Neuroscience、2019年 のレビューにまとまっています)。
その現れが、内斜視(寄り目)と眼振(目が小刻みに揺れる)。シャムで見かけても、それ自体は珍しいことではありません。
ただし 急に寄り目になった・急に目が揺れるようになった・ものにぶつかるようになった は別の話です。この場合は動物病院へ。次に書く目の遺伝病とも関係してきます。
このセクションで分かること:これだけ確認しておけば大きな後悔は避けやすい、という7項目

最後の項目について。国内の検査会社のメニューを見ると、シャムでは次の4つが申し込めます。
この中で、シャムで特に聞く価値があるのがPRA-rdAc です。
ほかの猫種の記事では「検査メニューにあることと、その猫種でリスクが高いことは別」と書いてきました。でもシャムは違います。41猫種846匹を調べた研究で、北米とヨーロッパのシャムの集団では、この変異が遺伝子のコピーのおよそ3分の1を占めていた と報告されています。論文も「とくにシャムのグループで重大な健康リスクになる」と書いています(Menotti-Raymond ら、The Veterinary Journal、2010年)。
ただしこれは 2010年の数字で、検査が広まる前のもの です。いまの繁殖集団では下がっている可能性があります。だからこそ「一般にシャムは多いらしい」で止めずに、その両親の結果 を聞く意味があるんですよね。
潜性の病気なので、片方の親が陰性なら、発症する子は生まれません。「両親そろって陰性」まで求めなくて大丈夫です。
聞き方のコツは 猫の遺伝子検査|何がわかる?費用とブリーダーへの聞き方 にまとめました。
家庭で観察した研究では、ペルシャよりシャムのほうが鳴いていました。方向としては言われているとおりです。ただし「1時間に何回」のような回数の数字は公表されていません。また「飼い主に向けて鳴く」で雑種より高かったのは、シャムだけでなく血統書つきの猫全体(雑種61匹・血統書つき56匹の比較、p<0.01)でした。
5,726匹の調査で、シャムを含むオリエンタル系は「飼い主が問題行動があると感じる割合」がペルシャと並んで最も高いグループでした。ただしこの質問は中身を分けていないので、何が問題とされたのかまでは分かりません。別項目で見ると、家族・来客・ほかの猫への攻撃性が最も高かったのはターキッシュバンとアンゴラで、オリエンタル系ではありませんでした。
留守番そのものを猫種別に比べたデータはありません。ただ過剰グルーミングが出やすい傾向を踏まえると、退屈な時間が長い環境はあまり向いていないと思います。在宅時間が短い方は、遊ぶ時間を朝晩に固定できるかを先に考えてみてください。
イギリスの集計では0歳時点の平均余命が11.69年でした(死亡88頭から算出)。雑種の11.89年とほぼ同じで、バーミーズの14.42年やバーマンの14.39年とくらべると短めです。ただしこれは子猫のうちに亡くなった子も含んだ平均で、国によっても差があります。日本でよく書かれる「12〜15年」とは、そもそも数えているものが違います。
普通です。ポイントの色素を作る酵素は体温が低いところでしか働かないので、お腹の中にいるあいだはほとんど色が出ません。生まれてから数週間かけて、耳・鼻・足先から濃くなっていきます。
人なつこさのような性格については、毛色による差は確認されていません。ただし攻撃性については、1,274匹の飼い主アンケートで毛色との関連を報告した研究があります(ただし抱っこや診察の場面では毛色差はほとんどありませんでした)。報告はあるけれど差は小さく一貫しない、くらいが正確なところです。くわしくは 黒猫の性格|「甘えん坊」の根拠を論文で確かめた にまとめています。
この記事で出てきたもののうち、次の3つは様子見をおすすめしません。
どれも「性格」や「クセ」で説明されがちですが、裏に体の問題があることがあります。症状が続く・繰り返すようでしたら、必ずかかりつけの動物病院に相談してくださいね。素人判断は禁物です。
シャムについて調べて出てきたのは、こんな結果でした。
「よく鳴く」は、方向としては本当でした。足りないのは、どのくらい鳴くのかという量のほうです。そこを数字で約束している記事があったら、出どころを一度たどってみてください。
そして実際に迎えるなら、鳴き声より効いてくるのはたぶん別のところです。お腹の毛が薄くなっていないかを月に1回見ること。そして迎える前に、両親のPRAの検査結果を聞いておくこと。この2つかなと思います。
※本記事に掲載している画像の一部は、Google Geminiで生成した画像をそのまま使用、または編集・加工して使用しています。生成された内容は目視で確認し、整合性に問題がないことを確認したうえで掲載しています。
猫と犬と暮らす毎日に、
ちいさな発見を。
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