


ロシアンブルーのあの毛色。 光の角度で銀色に見える青灰色と、 グリーンの瞳。 きれいですよね。
静かで、 鳴かなくて、 マンションでも飼いやすい。 だいたいそう紹介されています。
…なのに「後悔」「飼ってはいけない」で検索されている。
調べていくと、 出てくる話がほとんど 「懐いてくれない」「人見知りがすごい」 に集中していました。 で、 これ 飼い主5,726人分の回答を集めて、飼育環境の違いをそろえたうえで猫種を比べた研究 があります。 そこから見ていきます。
先に言っておくと、 布をかじる・吸う問題が最も少ない猫種 でもあります。 いい話も後半に。
> このセクションで分かること:性格の話を、数字で見るとどうなるか

フィンランドの研究チームが、 飼い主へのアンケートで 5,726匹・19の猫種グループ の行動を比較した研究を出しています(Salonen ら、Scientific Reports、2019年)。
猫の性格って、 だいたい「賢い」「遊び好き」「控えめ」みたいに紹介されます。 この論文、 冒頭でそこに触れていて、 こうした説明は飼い主やブリーダーの印象が元で、科学的な裏づけを欠いている と書いています。 しかもその例として名指しされているのが、 ロシアンブルーの「賢く、 遊び好きで、 控えめ」なんです。
ちなみにこの研究も飼い主へのアンケートがもとです。 ただ 5,726件を集めて、年齢や飼育環境の違いを統計でそろえてから猫種を比べている ので、 1人の体感とはだいぶ重みが違います。
2つとも1位です。 つまり「うちの子だけ懐かないのかな」ではなく、 猫種としてそういう傾向がある。 ここを知らずに迎えると、 「失敗したかも」と思ってしまいます。
ここ、 正直に書いておきます。
この論文、 自分で 「ロシアンブルーの人見知りが1位という結果は、先行研究と逆だ」 と書いています。 その先行研究のひとつが、 日本で獣医師を対象に行われた猫種の行動調査(Takeuchi & Mori、2009年)。
著者の説明はこうです。 大陸ごとに猫種の集団が遺伝的に分かれてきているせいかもしれない。 この研究は北ヨーロッパの猫が対象で、 先行研究はアメリカと日本でした。
なので「ロシアンブルー=人見知り」は、 絶対ではありません。 日本の個体群では違うかもしれない。 ただ そういう傾向が報告されている猫種だと知ったうえで迎える のが、 いちばん後悔が少ないと思います。
チャイムが鳴った瞬間にベッドの下へ。 友人を呼んでも、 帰るまで姿を見せない。 ここで無理に抱っこさせて人に慣れさせようとするのは逆効果で、 やることは逆。 安心して隠れられる場所を用意してあげるほうです。
ただし、 隠れたきり 24時間以上なにも食べない・水を飲まない・おしっこが出ていない ときは別です。 猫は食べない時間が続くと肝臓を傷めるので、 そこは待たずに動物病院へ連れていってあげてください。
> このセクションで分かること:矛盾しているように見える性格の読み解き方

同じ研究で、 猫種を性格のパターンで分類しています。 ロシアンブルーが入ったグループは 「もっとも怖がりで、もっとも外向的」。 ちなみに同じグループにいるのはベンガルです。
…怖がりで外向的。 矛盾しているみたいですが、 暮らしてみると筋が通ります。
論文によると、 この「外向的」は 活動量の高さ で説明がつくそうです。 なので正確には「家族にはベタベタ甘える」ではなく、 家族の前ではよく動く。 甘えるかどうかは個体差が大きいところです。
「静かでおとなしい猫」を期待して迎えると、 ここで2回ギャップが来ます。 来客のときに全然出てこないことと、 家族だけのときは意外と活発なこと。
ベンガルも同じグループなので、 ベンガルの鳴き声がうるさい?独特な声の理由と4つの対処法 と読み比べると、 このタイプの猫の扱いが見えてくると思います。
対照的なのがブリティッシュショートヘアで、 あちらは 人との接触が少ない確率が1位。 似ているようで、 中身はけっこう違います(ブリティッシュショートヘアの後悔|抱っこ嫌いと5つの注意点)。
> このセクションで分かること:「猫種だから」で決まる部分と、決まらない部分

同じ研究で、 行動の 遺伝率 も計算されています。 結果は 0.40〜0.53 でした。
ただ、 ここは正確に書きます。 この遺伝率が推定されたのは 血統データのそろったラグドール・メインクーン・ターキッシュバンの3猫種 で、 ロシアンブルーでは推定されていません。 なので「ロシアンブルーの人見知りの何割が遺伝か」という数字は、 まだ誰も出していない状態です。
そのうえで言えることは2つあります。
1位というのは、 グループの平均が高いという意味です。 同じロシアンブルーのなかでの個体差のほうが、猫種どうしの差より大きい。 人懐っこいロシアンブルーも普通にいます。
猫の行動が遺伝だけで決まらないのは確かです。 ただ 残りが全部「迎えたあとの環境」ではありません。
そこには、 生まれる前のことや、 離乳の時期、 そして 生後2〜7週の社会化 が入ります。 同じ研究室の別の論文では、 早すぎる離乳が攻撃性や常同行動を増やす ことが報告されています。
つまり、 いちばん効くタイミングは 迎えるより前 なんです。 だからブリーダーさんに聞くことが決まります。
ここを聞いておくかどうかで、 迎えたあとの難易度がだいぶ変わります。
慣らし方にはコツがあって、 無理に抱かせる・触らせる形は逆効果 です。 逆に、 来客のときにおやつが出てくる、 みたいに いいことと結びつける形なら効きます。 時間はかかりますが。
> このセクションで分かること:「ボイスレス」は本当か

ロシアンブルーは「ボイスレスキャット」と呼ばれることがあります。 ただ、 鳴き声の量を猫種どうしで定量的に比べた査読論文は見つかりませんでした。 獣医師の評点で猫種をランク付けした書籍はありますが、 さきほどの5,726匹の研究では 鳴き声は調査項目に入っていません。
なので、 ここは「静かな個体が多いと言われている」くらいに受け取っておくのが正直なところ。 静かさを期待して迎えるのは、おすすめしません。 よく鳴く子もいます。
これは数字があります。 ウールサッキング(毛布やセーターを吸ったり噛んだりする行動)の起きやすさで、 ロシアンブルーは 19グループ中もっとも低い という結果でした。
いちばん多かったのは雑種、 ノルウェージャンフォレストキャット、 ターキッシュバン、 メインクーン。 布を飲み込むと開腹手術になることもあるので、 ここが起きにくいのは地味だけど大きい長所です。
留守番そのものに猫種のデータはありません。 ただ新しいものが苦手な傾向を踏まえると、 工事の音や宅配の出入りが多い時期は、 隠れ場所を増やしておいてあげてください。
> このセクションで分かること:遺伝病の調べ方と、寿命の見かた

これ、 調べていていちばん意外だったところです。
ペルシャなら腎臓、 メインクーンなら心臓、 スコティッシュフォールドなら骨。 猫種にはたいてい「これに気をつけて」という定番があります。 ロシアンブルーには、それがありません。
遺伝子検査の会社のメニューを見ると、 ロシアンブルーでも貧血(PK欠損症)・腎臓(PKD)・神経(GM2)が申し込めます。 ただ 「申し込める」と「その猫種でリスクが高い」は別の話 なんですよね。
たとえばPK欠損症。 14,179頭・38猫種を調べた研究では、 検査を推奨する猫種としてアビシニアン、ソマリ、ベンガル、メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャットなどが挙がっていますが、ロシアンブルーは入っていません(Grahn ら 2012年)。 カリフォルニア大学デービス校の対象猫種リストにも入っていません。
検査メニューは「この猫種の人がよく申し込む項目」であって、 疾患リスクの一覧ではない、 ということです。 これは他の猫種を調べるときにも使える見方かなと思います。
肥大型心筋症(HCM)は猫でいちばん多い心臓病ですが、 コーネル大学が挙げている なりやすい猫種のリストに、ロシアンブルーは入っていません。 メインクーン、 ラグドール、 ブリティッシュショートヘア、 ペルシャ、 ベンガルあたりが並ぶなかで、 ここは安心材料です。
ただし 「好発猫種じゃない=ならない」ではありません。 HCMはどの猫にも起こりますし、 遺伝子検査が陰性でも発症します。 年1回の健康診断は、 猫種に関係なく受けておいてあげてください。
定番の病気がないからといって、 何も聞かなくていいわけではないです。 ロシアンブルーも他の猫種とかけ合わせて作られてきているので、 そのブリーダーさんが何を検査しているか は聞く意味があります。
聞き方のコツは 猫の遺伝子検査|何がわかる?費用とブリーダーへの聞き方 にまとめました。 ちなみにPK欠損症のような潜性の病気は、 片方の親が陰性なら、発症する子は生まれません。 「両親そろって陰性」まで求めなくて大丈夫です。
イギリスの大規模な調査では、 ロシアン系の猫の0歳時点の平均余命は 9.65年 でした(Teng ら 2024年)。 雑種の11.89年とくらべると短く見えます。
ただ この数字は19頭の死亡例から計算されたもの で、 幅も7.20〜12.10年とかなり広いです。 雑種の範囲と重なっているので、 「ロシアンブルーは短命」と読むのは正確ではありません。
猫全体の寿命の話は 猫の平均寿命|長生きする子の共通点と今日からできる5つの工夫 にまとめています。
ここが「うん、 大丈夫」なら、 ロシアンブルーはとても静かで、 とても律儀な同居人になってくれます。 一度心を許すと、 ずっとそばの定位置にいる感じ。 あの距離感、 好きな人はほんとうに好きだと思います。
人見知りが出るのは、 知らない人と知らないものに対してです。 家族と他人とで態度がはっきり違う猫種、 という理解がいちばん近いと思います。 どれくらい甘えるかは個体差が大きいので、 「誰にでも愛想がいい猫」を期待すると違う、 くらいに考えておくと安心です。
やわらぐことはありますが、 ゼロにはなりません。 しかも効くタイミングが早くて、 生後2〜7週の社会化が大きいとされています。 つまり 迎えた時点でかなり決まっている。 「治す」より「隠れ場所を用意する」ほうに力を使ったほうがラクです。
飼えます。 ただ 小さいお子さんがいる家や、来客が多い家 とは相性がよくないので、 そこだけ先に考えてみてください。
短毛なので毛玉にはなりませんが、 密なダブルコート なので換毛期はしっかり抜けます。 「短毛=抜けない」ではないです。 週2〜3回のブラッシングは用意しておいてください。
できますが、 新しい猫を迎えるのは「新しいもの」そのものなので、 時間をかけてあげてください。 先住がロシアンブルーの場合はとくに、 対面を急がないほうが安心です。
2026年10月にブリーダー仲介サイトで見たところ、 16万〜38万円で69件が出ていました。 中心は16万〜20万円台です。 ただ値段より、 引き渡しの週齢と離乳の時期 を教えてもらえるかのほうが、 あとで効いてきます。
「懐かない猫」ではなく、 「心を許す相手を絞る猫」。 そう思っておくと、 だいぶ見え方が変わります。
人見知りが1位という数字は北ヨーロッパの研究のもので、 日本の研究では違う結果も出ています。 なので「ロシアンブルーだから懐かない」と決めつける必要はありません。 ただ そういう傾向が報告されている猫種 だと知っておくと、 出てこない日にあわてなくて済みます。
そして効くタイミングは、 思ったより早いです。 どこから、何週齢で迎えるか。 ここを聞けるかどうかが、 迎えたあとの暮らしやすさをいちばん左右します。
食欲や元気のなさ、 歯ぐきの色で気になることが続くようでしたら、 かならずかかりつけの動物病院に相談してくださいね。 自己判断は禁物です。
※本記事に掲載している画像の一部は、Google Geminiで生成した画像をそのまま使用、または編集・加工して使用しています。生成された内容は目視で確認し、整合性に問題がないことを確認したうえで掲載しています。
猫と犬と暮らす毎日に、
ちいさな発見を。
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