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買ってきた爪とぎ器を、まったく使ってくれない。そのへんの段ボールはバリバリやるのに、です。しかもソファの角は毎日とがれている。
4,105人に聞いた調査を読んでいて、ひとつ大事なことに気づきました。
「猫がよく使う爪とぎ」と「ソファ被害が減る爪とぎ」が、同じではない。
この調査、両方を別々に測っていて、しかも答えが食い違っています。どちらを基準に選ぶかで、買うものが変わります。
順番に見ていきます。
このセクションで分かること:どんな調査なのか、どこまで当てにしていいのか

もとになっているのは、飼い主に爪とぎについて聞いた大規模なアンケート調査です(Wilson ら、Journal of Feline Medicine and Surgery、2016年)。
4,164件の回答のうち 4,105人分 を分析しています。36か国 からの回答で、7割以上がアメリカ(73.6%)。カナダ(8.7%)、イギリス(2.2%)と続きます。
ひとつめ。飼い主の自己申告です。 実験ではありません。論文自身も「都合のいいサンプルで、無作為ではない」「回答者が自分の好みに引っぱられたり、質問を飛ばしたり、正直でない答えをした可能性がある」と書いています。
ふたつめ。回答の大半が北米・イギリス です。日本は売り場の構成が違うので、そのまま当てはまる保証はありません。
みっつめが、いちばん大事です。 この調査、「お気に入りの爪とぎ器がある」と答えられなかった人は、分析から除外されています(爪とぎ器を1つも持っていない人も含めて)。
つまりこの数字は全部、すでに使ってくれている猫がいる家 のデータです。「まったく使ってくれない」という家は、そもそも入っていません。この記事を読んでいる方の状況そのものが、調査対象の外にある可能性があります。
そのうえで読んでください。
いちばん分かりやすい結果がこれでした。
いちばん多く置かれていたのはカーペット。でも、置いてあるなかでいちばん使われたのはロープ(サイザル麻)だった。
買うものと使われるものが、ずれているんです。
年齢で順位も変わっていました。
| 年齢 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| 9歳以下 | ロープ 32.5% | カーペット 25.1% | 段ボール 18.2% |
| 10歳以上 | カーペット 24.7% | ロープ 22.9% | 段ボール 19.6% |
9歳以下はロープが1位。10歳を過ぎるとカーペットが1位に入れ替わります。
日本で売られている爪とぎは、圧倒的に段ボールが多いですよね。
この調査では、段ボールはどの年齢でも3位でした。使われていないわけではないです。ただ 1位ではなかった。
ここはさっきの限界とセットで読んでください。アメリカの店にサイザル麻がたくさん並んでいるから1位になった、という可能性もあります。それでも、段ボールしか置いていなくて使ってくれないなら、ロープのものを1つ足してみる 価値はあると思います。
このセクションで分かること:この記事でいちばん大事なところ

この調査のいいところは、2つの違うことを別々に測っている ところです。
そして、この2つの答えが食い違っています。論文も「適切な爪とぎの好みとは違って」とわざわざ断ったうえで、数字を出しています。
よく使われた高さは、91cm以下が60.2%、91cmより高いものが36.3%。低いほうです。
ところが 困る場所での爪とぎ を見ると、逆でした。
9.5ポイントの差で、高いほうが少ない(P<0.0001)。論文の考察でも「3フィート(91cm)以上で、困る爪とぎが10%少なかった」とまとめられています。
ソファを守りたいなら、91cm以上 です。
(91cmは、論文の「3フィート」を換算した数字です)
形でも同じように差が出ています。
壁掛けはすっきりして見えるので置きたくなるんですが、この調査では被害がいちばん多いグループでした。
よく使われたのは、幅91cm以下のもの(88.1%)。細いほうです。
ところが論文の考察には、「台座の幅が広くなるほど、困る場所での爪とぎは減っていた」 と書かれています。
ただ、ここは実用性が低いです。台座が91cmを超える爪とぎ器は日本ではまず売っていないので、88.1%という数字は「ほとんどの製品がそうだった」と言っているのとほぼ同じなんですよね。幅は買い物の基準にしなくていいと思います。
ほぼ半分です。ただし10個は現実的ではないので、「増やすほど減る方向らしい」くらいに受け取るのがいいかなと思います。
論文の要旨には「種類やスタイルが増えるほど減った」とも書かれていますが、こちらには数値も検定も載っていません。数字が出ているのは「数」のほうです。どちらにしても、1つで足りないなら足す方向ではあります。
91cmはあくまで平均の話です。
猫が爪をとぐとき、前足を思いきり伸ばします。その伸びた長さより短いと、気持ちよくとげません。 うちの猫の体から決めるのがいちばん確実です。
測り方は 猫の体長の測り方|体高・全長・サイズの違いと健康チェック と 猫の体高|平均は何cm?肩までの測り方と目安 にまとめています。1分で終わります。
高いタワーを検討するなら、落下の話も見ておいてください。猫が高いところから落ちた|受診の目安と1125匹の記録 にまとめています。
このセクションで分かること:買い物以外にできること

ここ、個人的にいちばん効く話だと思いました。
爪とぎ器を使ったときに ごほうびをあげる(おやつ、声をかける、なでる、のどれか)家と、まったくあげない家で比べています。
12.7ポイントの差(P<0.0001)。
とがせたい場所でといだら、その場でほめる。なでる。おやつをあげる。それだけです。
困る場所でといでいるのを見たとき、多くの人が 口で叱る・体を持ち上げてどかす・別のものに気をそらす をやっていました(叩く人はほとんどいませんでした)。
そして論文にはこう書かれています。
これらの方法はどれも、困る場所での爪とぎの頻度を変えていなかった。
どれも、です。
叱っても変わらないのに、叱ると猫との関係は悪くなります。やめる理由としては十分かなと思います。
あと、こんな結果も。爪とぎ器をよく使っているかどうかは、困る場所での爪とぎの頻度に影響していませんでした(P=0.18)。爪とぎ器を気に入って使っている子でも、ソファはとぐということです。
このセクションで分かること:定番のアドバイスが、どこまで効くのか

困っている人はどのくらいいるか。
52%の飼い主が、困る場所での爪とぎを目撃していました(4,105人中2,125人)。半分です。
その人たちの猫は、65.0%が1日1回以上、35.4%が1日に何度も といでいます。毎日の話なんですよね。
その2,125人がどうしていたか。
近くに置いてあるんです。それでも、とがれている。論文の考察でも「同じ部屋に爪とぎ器があっても、7割近くの飼い主が困る爪とぎを報告していた。しかも爪とぎ器はかなり近くに置かれていることが多かった」とまとめられています。
ただし、ここは慎重に読んでください。この数字から「近くに置くのは無意味」とは言えません。 困っていない人が同じ部屋に置いていた割合は、論文に載っていないからです。比べる相手がいないので、効くか効かないかは判定できません。困っている人ほどあとから近くに移動させた、という順番の可能性もあります。
言えるのはこれだけです。困っている家の7割は、すでに「近くに置く」をやっている。 だから、それだけでは足りない家がかなりある。次の一手が要ります。
安心材料も。猫や犬の数が増えても、困る場所での爪とぎは増えていませんでした。
完全室内飼いの猫は、外に出る猫より爪とぎ器をよく使っていました(1日に何度も使うのが75.7%対69.6%)。ただし 困る場所での爪とぎの発生率は、室内飼いでもそうでなくても変わりませんでした(52.5%対51.5%)。
このセクションで分かること:これから買う人が、何を選べばいいか

ここまでの数字を、買い物リストにします。
素材:ロープ(サイザル麻)のものを最低1つ。段ボールしかないなら足す
高さ:91cm以上。これが被害の差がいちばんはっきり出ていた項目です
形:1段以上のキャットタワー。壁掛けタイプは最初の1つには選ばない
数:1つで足りないなら足す。縦型・タワー・床置きのように違うタイプだと、試せる幅が広がります
置いたあと:といだらほめる。叱らない
台座の幅は、日本で売っているものならどれでも条件を満たすので、気にしなくて大丈夫です。
迎えたばかりで全部そろえるのが大変なら、91cm以上のタワー1つ+床置きの段ボール1つ から始めるのが、この調査に素直なスタートかなと思います。
このセクションで分かること:論文の外の、今日できること
ここからは論文に書かれていないことなので、分けて書きます。
いま現在ソファがとがれているなら、爪とぎ器を買うのと並行して、ソファ側も守っておく ほうが早いです。
ソファを守るのと、爪とぎ器に誘導するのは別の作業です。片方だけだと、だいたいどちらも中途半端になります。
このセクションで分かること:年齢で変わる好みと、注意したい変化

素材は、10歳を過ぎるとロープからカーペットへ。硬いものから柔らかいものへ移ります。
形は、少しややこしいです。
縦型が1位なのは10〜13歳だけで、14歳を過ぎるとタワーに戻ります。「シニアになったら縦型」と単純化しないほうがよさそうです。
この調査でも、困る場所での爪とぎは年齢とともに減っていました。
ただ気をつけたいのは逆のパターンです。今までといでいた子が、急にとがなくなったとき。
猫の変形性関節症(関節が痛くなる病気)は高齢の猫に多く、50匹を調べた報告では 診断されたときの平均年齢が12歳 でした(Klinck ら、Canadian Veterinary Journal、2012年)。
この報告で大事なのはここです。診断のきっかけの多くが、飼い主が家で気づいた変化 だった。歩き方、ジャンプ、階段の上り下り。そして 診察室の身体検査では異常が見つからないこともある と書かれています。
ただし「爪とぎをやめること」が関節のサインだと書いた論文は、見つけられませんでした。 爪とぎの調査のほうにも、高齢猫が柔らかい素材を好む理由として「関節炎などの病気の可能性と矛盾しない」と推測が書かれているだけです。
なので、ここは断定しません。爪とぎは前足と背中を大きく伸ばす動きなので、歩き方やジャンプの変化と同じ系統として見ておく価値はある。そのくらいの受け取り方で。
高いところに登らなくなった、ジャンプを嫌がる、といった変化とセットで出ているなら、様子を見ないで動物病院に相談してください。病院で「異常なし」と言われても、家での変化のほうが先に出ることがあります。
短足の猫種は関節の負担がもともと大きいので、そのあたりは 短足猫種の関節ケア完全ガイド|マンチカン・ミヌエット・スコのリスク にまとめています。
4,105人の調査から出てきたのは、こんな結果でした。
ひとつだけ選ぶなら、91cm以上のタワーを1つ置いて、といだらほめる。これがいちばんデータに近い答えでした。
ただし、この調査には「お気に入りの爪とぎがない猫」が入っていません。うちの子がどれを選ぶかは、置いてみないと分からないです。ただ選択肢が1つしかないと、選びようがないので。
気になる変化があるときは、かかりつけの動物病院に相談してくださいね。
※本記事に掲載している画像の一部は、Google Geminiで生成した画像をそのまま使用、または編集・加工して使用しています。生成された内容は目視で確認し、整合性に問題がないことを確認したうえで掲載しています。
猫と犬と暮らす毎日に、
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