【猫の爪とぎの選び方】被害が減るのは91cm以上でした

爪とぎをする猫の水彩イラスト

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買ってきた爪とぎ器を、まったく使ってくれない。そのへんの段ボールはバリバリやるのに、です。しかもソファの角は毎日とがれている。

4,105人に聞いた調査を読んでいて、ひとつ大事なことに気づきました。

「猫がよく使う爪とぎ」と「ソファ被害が減る爪とぎ」が、同じではない。

この調査、両方を別々に測っていて、しかも答えが食い違っています。どちらを基準に選ぶかで、買うものが変わります。

目次

先に結論

  • いちばん 置かれている 素材はカーペット。いちばん 使われている 素材は ロープ(サイザル麻)
  • 猫が よく使っていた のは、高さ91cm以下(60.2%)
  • でも 困る場所での爪とぎが少なかった のは、高さ 91cm以上 のほう(64.7% → 55.2%、P<0.0001)
  • いちばん被害が少なかったのは 1段以上のキャットタワー。いちばん多かったのは 壁掛けタイプ(74.1%)
  • ほめる家の猫は、毎日お気に入りを使う割合が高い(80.4% 対 67.7%)。いっぽう 叱る・どかす・そらすは、どれも被害を変えていません
  • 爪とぎ器が 7個以下の家で60.2%、10個を超える家で32.4% が困る場所での爪とぎを経験

順番に見ていきます。

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まず、この調査の中身

このセクションで分かること:どんな調査なのか、どこまで当てにしていいのか

置かれている素材と使われている素材のずれ

もとになっているのは、飼い主に爪とぎについて聞いた大規模なアンケート調査です(Wilson ら、Journal of Feline Medicine and Surgery、2016年)。

4,164件の回答のうち 4,105人分 を分析しています。36か国 からの回答で、7割以上がアメリカ(73.6%)。カナダ(8.7%)、イギリス(2.2%)と続きます。

読む前に、限界を3つ

ひとつめ。飼い主の自己申告です。 実験ではありません。論文自身も「都合のいいサンプルで、無作為ではない」「回答者が自分の好みに引っぱられたり、質問を飛ばしたり、正直でない答えをした可能性がある」と書いています。

ふたつめ。回答の大半が北米・イギリス です。日本は売り場の構成が違うので、そのまま当てはまる保証はありません。

みっつめが、いちばん大事です。 この調査、「お気に入りの爪とぎ器がある」と答えられなかった人は、分析から除外されています(爪とぎ器を1つも持っていない人も含めて)。

つまりこの数字は全部、すでに使ってくれている猫がいる家 のデータです。「まったく使ってくれない」という家は、そもそも入っていません。この記事を読んでいる方の状況そのものが、調査対象の外にある可能性があります。

そのうえで読んでください。

置いてあるのはカーペット、使われているのはロープ

いちばん分かりやすい結果がこれでした。

いちばん多く置かれていたのはカーペット。でも、置いてあるなかでいちばん使われたのはロープ(サイザル麻)だった。

買うものと使われるものが、ずれているんです。

年齢で順位も変わっていました。

年齢1位2位3位
9歳以下ロープ 32.5%カーペット 25.1%段ボール 18.2%
10歳以上カーペット 24.7%ロープ 22.9%段ボール 19.6%

9歳以下はロープが1位。10歳を過ぎるとカーペットが1位に入れ替わります。

日本の主流は段ボールですが

日本で売られている爪とぎは、圧倒的に段ボールが多いですよね。

この調査では、段ボールはどの年齢でも3位でした。使われていないわけではないです。ただ 1位ではなかった。

ここはさっきの限界とセットで読んでください。アメリカの店にサイザル麻がたくさん並んでいるから1位になった、という可能性もあります。それでも、段ボールしか置いていなくて使ってくれないなら、ロープのものを1つ足してみる 価値はあると思います。

「使われる」と「被害が減る」は、別の話でした

このセクションで分かること:この記事でいちばん大事なところ

よく使われる爪とぎと、被害が減る爪とぎは違う

この調査のいいところは、2つの違うことを別々に測っている ところです。

  1. 猫が よく使った のはどれか
  2. 困る場所での爪とぎが少なかった のはどれか

そして、この2つの答えが食い違っています。論文も「適切な爪とぎの好みとは違って」とわざわざ断ったうえで、数字を出しています。

高さ:よく使われるのは低いほう、被害が減るのは高いほう

よく使われた高さは、91cm以下が60.2%、91cmより高いものが36.3%。低いほうです。

ところが 困る場所での爪とぎ を見ると、逆でした。

  • 高さ 91cmより高い 爪とぎを使っていた家 … 55.2%(1,215軒中671軒)
  • 高さ 91cm以下 の爪とぎを使っていた家 … 64.7%(2,012軒中1,301軒)

9.5ポイントの差で、高いほうが少ない(P<0.0001)。論文の考察でも「3フィート(91cm)以上で、困る爪とぎが10%少なかった」とまとめられています。

ソファを守りたいなら、91cm以上 です。

(91cmは、論文の「3フィート」を換算した数字です)

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形:1段以上のタワーがいちばん少なく、壁掛けがいちばん多い

形でも同じように差が出ています。

  • 1段以上のキャットタワー … 困る爪とぎが 55.3%(1,125軒中622軒)
  • それ以外のタイプ … 62.6%(2,219軒中1,389軒)。P<0.0001
  • 壁に掛けるタイプ … 74.1%(81軒中60軒)でいちばん多い

壁掛けはすっきりして見えるので置きたくなるんですが、この調査では被害がいちばん多いグループでした。

台座の幅:ここも逆でした

よく使われたのは、幅91cm以下のもの(88.1%)。細いほうです。

ところが論文の考察には、「台座の幅が広くなるほど、困る場所での爪とぎは減っていた」 と書かれています。

ただ、ここは実用性が低いです。台座が91cmを超える爪とぎ器は日本ではまず売っていないので、88.1%という数字は「ほとんどの製品がそうだった」と言っているのとほぼ同じなんですよね。幅は買い物の基準にしなくていいと思います。

数:7個以下で60.2%、10個超で32.4%

  • 爪とぎ器が 7個以下 の家 … 60.2% が困る場所での爪とぎを経験
  • 爪とぎ器が 10個超 の家 … 32.4%

ほぼ半分です。ただし10個は現実的ではないので、「増やすほど減る方向らしい」くらいに受け取るのがいいかなと思います。

論文の要旨には「種類やスタイルが増えるほど減った」とも書かれていますが、こちらには数値も検定も載っていません。数字が出ているのは「数」のほうです。どちらにしても、1つで足りないなら足す方向ではあります。

買う前に、うちの猫を測ってください

91cmはあくまで平均の話です。

猫が爪をとぐとき、前足を思いきり伸ばします。その伸びた長さより短いと、気持ちよくとげません。 うちの猫の体から決めるのがいちばん確実です。

測り方は 猫の体長の測り方|体高・全長・サイズの違いと健康チェック と 猫の体高|平均は何cm?肩までの測り方と目安 にまとめています。1分で終わります。

高いタワーを検討するなら、落下の話も見ておいてください。猫が高いところから落ちた|受診の目安と1125匹の記録 にまとめています。

ほめると使う。叱っても、変わらない

このセクションで分かること:買い物以外にできること

ほめると使う、叱っても変わらない

ここ、個人的にいちばん効く話だと思いました。

ほめている家の猫は、よく使っています

爪とぎ器を使ったときに ごほうびをあげる(おやつ、声をかける、なでる、のどれか)家と、まったくあげない家で比べています。

  • ごほうびをあげる家 … 80.4% の猫が、お気に入りの爪とぎ器を毎日使う(2,942軒中2,366軒)
  • まったくあげない家 … 67.7%(297軒中201軒)

12.7ポイントの差(P<0.0001)。

とがせたい場所でといだら、その場でほめる。なでる。おやつをあげる。それだけです。

叱る・どかす・そらすは、どれも変わっていません

困る場所でといでいるのを見たとき、多くの人が 口で叱る・体を持ち上げてどかす・別のものに気をそらす をやっていました(叩く人はほとんどいませんでした)。

そして論文にはこう書かれています。

これらの方法はどれも、困る場所での爪とぎの頻度を変えていなかった。

どれも、です。

叱っても変わらないのに、叱ると猫との関係は悪くなります。やめる理由としては十分かなと思います。

あと、こんな結果も。爪とぎ器をよく使っているかどうかは、困る場所での爪とぎの頻度に影響していませんでした(P=0.18)。爪とぎ器を気に入って使っている子でも、ソファはとぐということです。

近くに置いても、7割がとがれています

このセクションで分かること:定番のアドバイスが、どこまで効くのか

困っている人はすでに近くに置いている

困っている人はどのくらいいるか。

52%の飼い主が、困る場所での爪とぎを目撃していました(4,105人中2,125人)。半分です。

その人たちの猫は、65.0%が1日1回以上、35.4%が1日に何度も といでいます。毎日の話なんですよね。

ほとんどの家が「近くに置く」をやっていました

その2,125人がどうしていたか。

  • 69.3%は、とがれている場所と同じ部屋に爪とぎ器を置いていた
  • 49.3%は、とがれている場所から1〜5フィート(約30〜150cm)以内に置いていた

近くに置いてあるんです。それでも、とがれている。論文の考察でも「同じ部屋に爪とぎ器があっても、7割近くの飼い主が困る爪とぎを報告していた。しかも爪とぎ器はかなり近くに置かれていることが多かった」とまとめられています。

ただし、ここは慎重に読んでください。この数字から「近くに置くのは無意味」とは言えません。 困っていない人が同じ部屋に置いていた割合は、論文に載っていないからです。比べる相手がいないので、効くか効かないかは判定できません。困っている人ほどあとから近くに移動させた、という順番の可能性もあります。

言えるのはこれだけです。困っている家の7割は、すでに「近くに置く」をやっている。 だから、それだけでは足りない家がかなりある。次の一手が要ります。

多頭飼いでも増えません

安心材料も。猫や犬の数が増えても、困る場所での爪とぎは増えていませんでした。

完全室内飼いの猫は、外に出る猫より爪とぎ器をよく使っていました(1日に何度も使うのが75.7%対69.6%)。ただし 困る場所での爪とぎの発生率は、室内飼いでもそうでなくても変わりませんでした(52.5%対51.5%)。

最初に置くなら、この組み合わせ

このセクションで分かること:これから買う人が、何を選べばいいか

最初に置く爪とぎの組み合わせ

ここまでの数字を、買い物リストにします。

素材:ロープ(サイザル麻)のものを最低1つ。段ボールしかないなら足す

高さ:91cm以上。これが被害の差がいちばんはっきり出ていた項目です

形:1段以上のキャットタワー。壁掛けタイプは最初の1つには選ばない

数:1つで足りないなら足す。縦型・タワー・床置きのように違うタイプだと、試せる幅が広がります

置いたあと:といだらほめる。叱らない

台座の幅は、日本で売っているものならどれでも条件を満たすので、気にしなくて大丈夫です。

迎えたばかりで全部そろえるのが大変なら、91cm以上のタワー1つ+床置きの段ボール1つ から始めるのが、この調査に素直なスタートかなと思います。

ソファそのものを守る話

このセクションで分かること:論文の外の、今日できること

ここからは論文に書かれていないことなので、分けて書きます。

いま現在ソファがとがれているなら、爪とぎ器を買うのと並行して、ソファ側も守っておく ほうが早いです。

  • 保護シートや爪とぎ防止フィルムを、とがれている面に貼る
  • カバーをかける。織りの詰まった生地のほうが爪がかかりにくいです
  • 爪を切る。深爪にならない範囲で、定期的に
  • とがれている面の前に、新しい爪とぎ器を置く。移動させるのは、使い始めてから少しずつ

ソファを守るのと、爪とぎ器に誘導するのは別の作業です。片方だけだと、だいたいどちらも中途半端になります。

10歳を過ぎたら、見直してあげてください

このセクションで分かること:年齢で変わる好みと、注意したい変化

年齢で変わる爪とぎの好み

素材は、10歳を過ぎるとロープからカーペットへ。硬いものから柔らかいものへ移ります。

形は、少しややこしいです。

  • 9歳以下 … 1段以上のキャットタワーが1位、次に縦型
  • 10〜13歳 … 縦型が1位、次にタワー
  • 14歳以上 … またタワーが1位 に戻る

縦型が1位なのは10〜13歳だけで、14歳を過ぎるとタワーに戻ります。「シニアになったら縦型」と単純化しないほうがよさそうです。

急にとがなくなったときは

この調査でも、困る場所での爪とぎは年齢とともに減っていました。

ただ気をつけたいのは逆のパターンです。今までといでいた子が、急にとがなくなったとき。

猫の変形性関節症(関節が痛くなる病気)は高齢の猫に多く、50匹を調べた報告では 診断されたときの平均年齢が12歳 でした(Klinck ら、Canadian Veterinary Journal、2012年)。

この報告で大事なのはここです。診断のきっかけの多くが、飼い主が家で気づいた変化 だった。歩き方、ジャンプ、階段の上り下り。そして 診察室の身体検査では異常が見つからないこともある と書かれています。

ただし「爪とぎをやめること」が関節のサインだと書いた論文は、見つけられませんでした。 爪とぎの調査のほうにも、高齢猫が柔らかい素材を好む理由として「関節炎などの病気の可能性と矛盾しない」と推測が書かれているだけです。

なので、ここは断定しません。爪とぎは前足と背中を大きく伸ばす動きなので、歩き方やジャンプの変化と同じ系統として見ておく価値はある。そのくらいの受け取り方で。

高いところに登らなくなった、ジャンプを嫌がる、といった変化とセットで出ているなら、様子を見ないで動物病院に相談してください。病院で「異常なし」と言われても、家での変化のほうが先に出ることがあります。

短足の猫種は関節の負担がもともと大きいので、そのあたりは 短足猫種の関節ケア完全ガイド|マンチカン・ミヌエット・スコのリスク にまとめています。

よくある質問(FAQ)

結局、高いのと低いの、どっちを買えばいいですか?

段ボールの爪とぎはだめなんですか?

とがれるソファの横に置いているのに使ってくれません

叱るのは意味がありますか?

壁に掛けるタイプはどうですか?

猫が爪とぎをしなくなりました

まとめ

4,105人の調査から出てきたのは、こんな結果でした。

  • 置かれているのはカーペット、使われているのはロープ
  • よく使われる爪とぎと、被害が減る爪とぎは別
  • 被害が少なかったのは、高さ91cm以上(64.7%→55.2%)と1段以上のタワー。多かったのは壁掛け(74.1%)
  • ほめる家の猫はよく使う(80.4%対67.7%)。叱る・どかす・そらすはどれも効いていない
  • 困っている家の7割は、すでに同じ部屋に爪とぎ器を置いている

ひとつだけ選ぶなら、91cm以上のタワーを1つ置いて、といだらほめる。これがいちばんデータに近い答えでした。

ただし、この調査には「お気に入りの爪とぎがない猫」が入っていません。うちの子がどれを選ぶかは、置いてみないと分からないです。ただ選択肢が1つしかないと、選びようがないので。

気になる変化があるときは、かかりつけの動物病院に相談してくださいね。

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※本記事に掲載している画像の一部は、Google Geminiで生成した画像をそのまま使用、または編集・加工して使用しています。生成された内容は目視で確認し、整合性に問題がないことを確認したうえで掲載しています。

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この記事を書いた人

猫と犬と暮らす毎日には、ちいさな発見と幸せが溢れています。子どものころからずっと続く動物好きと、自宅での多頭飼いから見つけた、暮らしの中の気づきを綴ります。

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