


いまこのページを開いている方は、たぶん探している最中だと思います。
先に結論だけ置いておきます。遠くへ行っている可能性より、近すぎて見落としている可能性のほうがずっと高いです。
迷子になった猫1210匹を追った調査があります。そこでは、完全室内飼いの猫が見つかった距離の中央値が 39メートル でした。家の敷地と、お隣の数軒ぶんです。
ひとつずつ、数字と一緒に見ていきますね。
このセクションで分かること:外を探す前に室内を確認すべき理由と、見るべき場所

環境省の収容動物検索情報サイトに、こう書かれています。
室内飼いの猫がいなくなったときには、まず室内を徹底的に捜してください。臆病な猫では、何かに驚き、普段なら考えもしないところに何回も隠れていることもあります
「いや、家中探したよ」と思いますよね。それでも、もう一度です。
環境省によれば、猫は体調が悪かったり慣れない場所に迷い込んだりしたとき、暗くて狭いところでじっとしている習性があります。じっとしている猫は、呼んでも出てきません。声も出しません。だから「いない」ように見えてしまう。
見落としやすいのはこのあたりです。
ここで大事なのは、探すときに静かにすること。名前を呼びながらバタバタ歩き回ると、怯えている猫はさらに奥に入ります。部屋の電気を消して、静かに座って、音がしないか待つ時間も作ってあげてください。
室内にいなかったら、次は家の周囲です。環境省も、物置の中、冷暖房の室外機の下、植え込みの中といった「家の周囲の狭くて暗いところ」を挙げています。
このセクションで分かること:室内飼いと外に出る猫で、見つかる距離がどれだけ違うか

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
2018年に『Animals』という学術誌に出た調査があります。オーストラリアのクイーンズランド大学と、アメリカで迷子ペットの捜索を支援しているNPOが共同で行ったもので、迷子になった猫1210匹ぶんの回答を分析しています。
生きて見つかった猫のうち、距離が記録されていた477匹を見ると、こうでした。
完全室内飼いの猫と、ふだんから外に出ている猫で、桁が違います。
よく「半径500メートルを探しましょう」と言われますよね。あれは全体の75パーセントが収まる範囲の話で、間違いではありません。ただ、室内飼いの猫に限ると、その4分の3は137メートル以内にいます。
137メートルというと、だいたい家の前の道を往復して、隣のブロックの角まで。その範囲を丁寧に3回見るほうが、500メートル四方を1回ざっと回るより当たります。
もちろん例外はあって、同じ調査で43匹は3キロから25キロ離れた場所で見つかっています。最長は25キロでした。
なので「必ず近くにいる」ではなく、近いところから順に、確実につぶしていく。そういう優先順位の話として読んでいただけたらと思います。
見つかった場所の内訳も出ていて、83パーセントは屋外でした。ただ注目したいのが次で、11パーセントは「よその家の中」です。自分の家の中で見つかった猫も4パーセントいました。
さらに、好奇心が強いと飼い主が評価していた猫ほど、よその家の中で見つかる割合が高くなっていました(好奇心の評価が最低の猫で6パーセント、最高の猫で17パーセント)。
よその家の中で見つかった62匹の内訳も出ていて、いちばん多いのが ガレージ(28パーセント・9匹)。次が家具の裏や下(22パーセント)、地下室(13パーセント)でした。数が少ないので目安程度ですが、入り込んで扉が閉まり、出られなくなるパターンが見えます。
だからこそ、次の「ご近所に声をかける」が効いてきます。家主が気づいていないと、開けてもらえません。
猫の性格と行動の関係については 【キジトラの性格】「警戒心が強い」の根拠を論文で確かめた でも触れています。
正直に書いておきます。
この調査で国が分かっているのは686匹で、内訳はアメリカ59パーセント、オーストラリア20パーセント、カナダ14パーセント。この内訳に日本は出てきません(残る524匹は国が記録されていません)。
さらに論文自身が、いくつかの限界を挙げています。回答者の71パーセントは、いなくなってから6か月以上たって回答していて、期間の中央値は731日(約2年)。記憶違いが入り込む条件です。それから、回答者の90パーセントが「猫を家族だと思っている」と答えていて、平均的な飼い主より熱心に探した人たちに偏っている可能性があります。
なので、パーセントの一桁目まで日本にあてはまると考えないほうがいいです。
それでも距離の話を信じていい理由があって、環境省が同じことを書いているからなんです。「室内飼いの猫は、外に出ても遠くに行かないことがほとんどです」と。日本の行政が経験から言っていることと、海外の1210匹のデータが、同じ方向を指しています。
このセクションで分かること:同じ時間をかけるなら、どの探し方を選ぶべきか

同じ調査で、飼い主がどんな方法を使ったかと、その結果も集計されています。
実際に足で探した場合、59パーセントの猫が生きて見つかっていました。足で探さなかった場合より高いのですが、統計的にはぎりぎり有意に届いていません(p = 0.071)。論文もそこは「ある程度の証拠がある」という控えめな書き方をしています。
ただ、足で探した人が96パーセントと圧倒的に多いので、比較の相手が38匹しかいません。研究チーム自身は論文の締めくくりで、「徹底的に足で探すことが、生きて見つかる可能性を高める」と書いています。
もっと使えるのが、足で探す方法の中での差のほうです。
ここは少しややこしいので、先に整理させてください。論文の表には 別々の2つの数字 が載っています。混ぜると読み違えます。
②で高かったのがこの4つでした。論文も、この順で挙げています。
意外だったのが最下位で、「名前を呼びながら探す」の34パーセント。93パーセントの人がやっているのに、それが決め手になった人は3人に1人でした。呼べば出てくる、とは限らないということだと思います。
いっぽう①のほうで低かったのが「車で周辺を走り回る」の52パーセントです。他の探し方は57〜62パーセントなので、ここだけ低い。ただし②で見ると車は39パーセントで、最下位は「名前を呼ぶ」のほうです。①と②で順番が入れ替わるので、「車がいちばんダメ」と単純には言えません。
それでも、車の分が悪いのは納得できます。猫は狭くて暗いところに隠れています。車の速度では、室外機の下も植え込みの奥も見えません。焦っているときほど車を出したくなりますが、降りて、しゃがんで、懐中電灯で覗くほうが当たりそうです。
なお、ここで挙げた細かい方法どうしの差には、論文は統計的な検定をかけていません。「数字のうえではこうだった」という話として読んでください。
夜の捜索が効くのは、猫の目が光を反射するからです。昼間は茂みの中が真っ黒で何も見えないのに、夜に懐中電灯を向けると目だけが光ります。静かで人通りも少ないので、猫も出てきやすい時間帯だったりします。
同じ表に、ちょっと誤解を招きそうな数字が載っています。
ポスターなどで告知した人、施設に連絡した人、専門家に依頼した人のほうが、生きて見つかった割合が低い(どちらも p < 0.001)。これらの方法では41〜55パーセントでした。
これを「告知や専門家は逆効果」と読むのは、たぶん順番が逆です。すぐ見つかった人は、ポスターを作る段階まで行きません。見つからないから次の手に進むわけで、手段が結果を悪くしたのではなく、状況が厳しい人ほどその手段に進んでいる と考えるほうが自然です。
なので告知はしてください。ただ、ポスターを作ったことで「やるべきことはやった」と感じてしまうのがいちばん危ない。印刷しているあいだも、足で探す時間は減っています。
このセクションで分かること:日数ごとの発見率と、いつまで本気で探すか

ここは少し厳しい数字です。
1044匹について、いなくなってからの日数と結果が追えています。生きて見つかった割合は、こうなっていました。
61日を過ぎると、ほとんど増えません。 1年で61パーセント、そこから3年かけて3ポイントしか動いていない。
生きて見つかった猫が、いなくなっていた期間の中央値は 6日 でした(4分の1は2日以内、4分の3は21日以内)。
つまり、最初の1週間が本番です。ここに時間を注げるかどうかで結果が変わります。仕事を休める人は休んだほうがいい、というくらいの話だと思っています。
逆に言うと、1か月探して見つからなくても、そこで終わりではありません。50パーセントから56パーセントへの伸びは、2か月目に見つかった猫たちです。
このセクションで分かること:発見した瞬間の扱い方と、そのあとの健康チェック
見つけた瞬間、飛びついて抱き上げたくなります。でも、ここで逃げられると今度は警戒心が上がって、次がかなり難しくなります。
同じ調査で、見つかったときの猫の様子が記録されていました。
半分は怯えています。 飼い主の顔を見ても、すぐには普段の猫に戻りません。
なので、見つけても駆け寄らない。しゃがんで、低い声で名前を呼んで、向こうから出てくるのを待つ。出てこないなら、キャリーかフードを置いて少し離れる。狭い場所の奥にいるなら、無理に引っ張り出さないほうが安全です。
キャリーに慣れていない子だと、ここでまたひと苦労します。ふだんからの慣らし方は 【猫がキャリーに入らない】今日やる方法と次回までの慣らし方 にまとめました。
9パーセントは、見つかった時点で具合が悪いかケガをしていました。外にいた時間が長いほど、脱水と衰弱が心配になります。
見た目が元気でも、外に出ていた猫は感染症やノミ・ダニをもらっていることがあります。数日以内に動物病院で診てもらうのが安心です。気になる様子があるなら、その日のうちに相談してあげてください。素人判断は避けたいところです。
このセクションで分かること:どこに届けるか、マイクロチップの落とし穴
環境省は、迷子になった地域の 保健所・動物管理センター・交番・動物病院 への連絡を挙げています。
ただ、ここはひとつ注意があります。さきほどの調査で、生きて見つかった猫のうち、収容施設で見つかったのは2パーセント未満でした。環境省も「猫は犬と違い、自治体に捕獲されることは基本的にありません」と書いています。
じゃあ連絡しなくていいのかというと、逆です。理由が2つあります。
ひとつは、自治体に保護される数少ないケースが 負傷動物として運び込まれる重症の子 であることがほとんどだから。万一のときに身元がわかる状態にしておく意味があります。
もうひとつが、調査で見つかった面白い点です。施設に電話した人・訪ねた人のうち36パーセントが「あれがいちばん助かった方法のひとつだった」と答えています。 論文は「施設の職員が、適切な探し方を助言してくれたからではないか」と書いています。猫が施設にいるかどうかとは別に、相談窓口として効いているわけです。
手間は数本の電話なので、探しながら出しておいてください。
2022年6月から、ブリーダーやペットショップで販売される犬猫にはマイクロチップの装着が義務づけられています。
ここが盲点で、買ったときに入っていたチップは、そのままだと前の飼い主(販売業者)の情報のままです。環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」サイトで 変更登録 をして、はじめて自分の連絡先になります。オンライン申請で400円。
保護されてチップを読み取ってもらえても、登録が前のままだと連絡が来ません。これは実際によくあることらしく、さきほどの論文も別の調査を引いて、マイクロチップが入っている犬猫の37パーセントで、登録が前の飼い主のままだったり電話が繋がらなかったりした と書いています。
手続きはオンラインでできますが、登録証明書が必要 です。購入時に受け取っている書類で、ここに識別番号と暗証記号が載っています。見あたらない場合は、環境省のコールセンター(03-6384-5320/日祝を除く9時〜18時)で相談できます。
また、民間団体が独自に行っているマイクロチップ登録とは別の制度である点も、環境省が注意喚起しています。両方やっている場合は、両方の情報が最新か確認しておくと安心です。
このセクションで分かること:探している最中によく出てくる疑問
生きて見つかった猫がいなくなっていた期間は、中央値で6日でした。発見率は7日で34パーセント、30日で50パーセント、61日で56パーセントまで伸びて、そこからはほとんど増えません。最初の1週間に全力を注いで、1〜2か月は手を緩めない、というのが数字の示す形です。
この調査では、においを使う方法の効果は測られていません。効果を示したデータは見つけられませんでした。ただ、使っていたトイレの砂や飼い主のにおいがついたものを玄関先に置くこと自体に害はないので、やりたければどうぞ、という位置づけです。あわせてフードを置くなら、近所の猫や他の動物が来ることも想定しておいてください。
調査では、ご近所に声をかけて協力を頼む方法が、見つかるまでがいちばん早い方法のひとつでした。よその家の中で見つかる猫が11パーセントいるので、入ってしまった先の人に気づいてもらえるかがそのまま結果に効きます。写真を印刷して、連絡先を書いて渡すだけで十分です。
あります。調査では43匹が3キロから25キロ離れた場所で見つかっていて、最長は25キロでした。ただ完全室内飼いの猫は4分の3が137メートル以内でしたので、近いところから順につぶしていくのが効率的です。
姿は見えるのに捕まえられない、という段階まで来たら検討する価値があります。調査では、捕獲全体で見ると使った人と使わなかった人に統計的な差は出ていません(p = 0.307)。ただ、実際に捕獲器を使って見つけた人の72パーセントが「これがいちばん助かった」と答えていて、これは調査の中でいちばん高い数字です。ペット探偵や迷子ペット回収のボランティアも70パーセントで、同じくらい高い。自治体や保護団体が貸し出していることもあるので、問い合わせてみてください。
遠くを探したくなったときほど、足元をもう一周。それがいちばん当たります。
参考にした資料
※本記事に掲載している画像の一部は、Google Geminiで生成した画像をそのまま使用、または編集・加工して使用しています。生成された内容は目視で確認し、整合性に問題がないことを確認したうえで掲載しています。
猫と犬と暮らす毎日に、
ちいさな発見を。
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